種から本格的な黒松盆栽をつくるには、苗木のときの「曲付け」がとても重要になります。
太くなると幹は曲げらないので、苗木のときに付けた曲がその樹の将来を決めます。
曲付けの基本は、2〜3年目の苗木に針金をかけて根元から幹を曲げます。
苗木が太くなりすぎると曲げられない可能性があり、逆に細すぎると、幹が割れてしまう可能性があり、せっかくの苗木をダメにしてしまうかもしれません。
曲げ方は個人の自由です。
しかしながら、やってみるとなかなか難しいもので、思ったように曲げられなかったり、小さく曲げすぎて太らせたら曲がなくなったり…。
曲のつけ方で、将来的ほ価値の低下にもつながります。
そこで、この記事では本格的な黒松盆栽をつくるための「曲付け」について、大事なポイントを紹介します。
この記事を読むことで、将来が楽しみな黒松盆栽をつくることができますよ。
苗木のときにつけた曲で将来の価値が決まるなんて、とてもロマンですよね。
盆栽士
ちちりん
はじめまして、ちちりんです。盆栽歴(趣味)3年のサラリーマンです。1軒屋の庭(裏)で200株以上の盆栽苗を育てています。
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どうして苗木を曲付けするのか?
単に幹が太くなると、曲げられないからです。
なので、苗木の時に曲げておくことが重要になります。
樹は成長するにつれて幹が太くなり、根元につけた第1曲目が将来の「立ち上がり」になります。
幹が太くなることや立ち上がりなど、将来の樹姿をイメージしながら、曲付けすることがむずかしくもあり、盆栽をつくる上で最もおもしろいところです。
まずは基本的な曲付けからはじめてみましょう。
盆栽初心者にはなかなか難しいところですが、とにかく曲げとけばなんとかなります。
曲付けする時期
曲付けするタイミングについて説明します。
主に太さ(樹齢)と季節がポイントになります。
太さは7mm〜10mmぐらいが良いです。
10mmを超えると曲げにくく、7mm未満になると細すぎて折れたり、幹が割れたり、根張りが甘かったりします。
おおよそ発芽後1〜2年後くらいになります。
肥培によって早く太くできれば、1年後ぐらいですね。
季節は真夏と真冬を避ければ、いつでも大丈夫です。
樹液の流れが悪い真冬は曲げにくく、気温が高くて乾燥しやすい真夏は枯らしてしまうリスクが高いです。
あとは太くなり過ぎる前に曲付けしてしまいましょう。
針金の太さ
針金の太さは、曲げたい幹や枝の太さに対して1/3ぐらいの太さを選びます。
これは曲付けだけではなく、整枝するときも考え方は同じなので覚えておきましょう。
ちなみにアルミ線は柔らかいので太め、銅線は曲げたあとに硬くなりやすいので、少し細めでも大丈夫です。(銅線は高価なので、アルミ線で十分です)
幹の曲げ方
あなたがイメージする将来の姿を思い浮かべながら曲げましょう。
一般的に「の」または「つ」の字の形に曲げると良いと言われています。
曲が小さいと、幹を太らせたときに幹どおしが接触して癒着し、曲はいづれ消えます。
それから、一般的に曲の内側が太りやすいと言われています。
曲の外側は幹の組織が部分的に裂けたり破壊され、内側は水吸いがしっかり機能するからと考えられます。
なので、上記を考慮しながら将来の成長を見越した曲付けします。
小品サイズにするなら曲は小さくても良いですし、中品以上にするなら、ある程度大きな曲にしておかないと、曲が消えてしまいます。
曲付けの手順
それでは曲付けの手順を紹介します。
もみじなども同じですが、基本的に芽(つまり枝)は「節」から吹いてきます。
例えば、模様木の樹形を考えたとき、一の枝は曲げの外側に欲しいものです。
なので、曲げの外側がちょうど「節」になるように曲げてあげると、今後、木造りがやり易くなります。
なので、まずは節を確認しましょう。
そして、この時点で曲げ方や曲げる方向などを決めておきましょう。
将来の「立ち上がり」をつくりたいので、できる限り根元から曲げたいものです。
根元に針金をかけるために、少し用土を掘って根元を確認する必要があります。
またポリポットであれば周りを切ってもかまいません。(私は切っています)
針金をかけたときに邪魔になりそうな枝や葉を切ります。
ただし、「節」の部分(将来、芽が吹いてほしい箇所)の葉は残しておいてください。
針金を用土に斜めに突き刺して固定し、樹の下から巻きます。
しっかりと根元に針金を巻き、角度は45°を目指してゆっくり丁寧に作業します。
このとき、できるだけ葉や芽を巻き込まないようにしましょう。
なお、針金を巻く方向と樹を曲げる方向は同じにする必要があるため、樹の曲げる方向によって針金を巻く方向が決まります。
逆にしてしまうと、針金が緩くなってしまい、曲がつかなくなりますので注意します。
事前に樹を曲げる方向を決めてから針金を刺す方向を決めましょう。
このタイミングでたくさん曲げて完成形をつくるわけではありませんので、樹の上部まで全部針金をかける必要はありません。
「の」の字か「つ」の字を目指して、ゆっくり少しずつ幹が割れていないかを確認しながら曲げていきます。
曲げた外側のカーブが針金に当たるように曲げます。
少し捻り(ねじり)ながら曲げることと、最後は芽が上を向くようにしておくことがコツです。
正面から見た感じだと、以下のような感じです。
節が曲の外側にあると、一の枝をつくる場合や芯の立て替え時に盆栽としてつくりやすくなります。
アフターケア
曲付けすると、樹にも負担がかかります。
アフターケアをしっかり行いましょう。
2〜3日は明るい日陰で管理しましょう。
根を確認する際、かなり掘った場合は、用土を追加しておきましょう。
肥料は2週間ほどは控えましょう。
最初は少量から与えて、様子を見ながら徐々に増やしましょう。
針金が幹に食い込んできたら外しましょう。
針金を巻く時期によって、幹の太り方が変わるので一概に言えませんが、4〜5ヶ月ぐらいで一旦型がつくと思います。
黒松の場合、樹齢とともに幹肌が荒れ樹皮が重なって食い込み跡はわからなくなるので、多少針金が食い込んでもあまり問題ありません。
針金は細かく切って外します。
誤って樹を傷つけないように気をつけましょう。
針金がけの基本は以下の教科書サイトをご参考に。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では、苗木の「曲付け」について紹介しました。
種から黒松盆栽をつくる場合、その樹の将来を決める大切な作業なのでしっかり覚えておきましょう。
また、樹は生長するにつれて曲が段々と緩くなってしまうため、定期的な曲付けが必要となります。
無理はせず、少しづつやっていきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。