種から発芽した苗は最初に「直根」という太くて真下に長い根を出します。
直根は幹を支えることが目的の根なので水分や養分をほとんど吸収することはありません。
なので、薄い鉢に入れる盆栽には不要な根となります。
黒松も同じように発芽した後は直根を伸ばすので、将来的にこの直根は切り詰めることになります。
それを発芽直後に行うのが「軸切り挿し芽」です。
本格的な小品盆栽をつくるならやった方がよいと考えますが、弱い個体であれば枯れてしまうリスクもあります。
この記事では「軸切り挿し芽」の目的や手順、適期の見分け方などを紹介します。
少しでも成功率をUPさせて、本格的な黒松の小品盆栽をつくりましょう。
盆栽士
ちちりん
はじめまして、ちちりんです。盆栽歴(趣味)3年のサラリーマンです。1軒屋の庭(裏)で200株以上の盆栽苗を育てています。
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軸切り挿し芽をする目的
改めて、軸切り挿し芽をする目的(メリット)は主に2つです。
- 根張り 〜 一の枝まで間(立ち上がり)を短くできる
- 良い根張りが比較的早く作れる
樹齢が長い黒松は幹の根元から芽吹くことがありません。
本格的な小品黒松盆栽をつくるには、根張りから一の枝までの距離が短い方が好ましく、太くて逞しい黒松の良さを魅せることができます。
さらに良い根張り(八方根)を比較的早くつくることも期待できます。
発芽した苗は太くて真下(地面)へ向かって生長する直根が生えますが、これは将来的に鉢に収める盆栽にとっては邪魔となります。
さらに養分や水分を吸収するのは主に細根であり、直根を処理しないと根張りとなる横根にも栄養が行き渡らずで、根づくりがなかなかうまくいきません。
なので、発芽してすぐに直根を切って新たな根を生やすことも目的の一つです。
勘違いしないでいただきたいのが、軸切り挿し芽をしなくても植え替えの度、しっかり根処理を続けていけば、良い根張りに樹に仕立てていくことはできると思います。
わざわざ枯れるかもしれないリスクを必ず背負う必要はなく、時間と手間(=愛情)をかけて、ゆっくり作っていくのも盆栽の楽しみの一つだと思います。
上記を踏まえて、軸切り挿し芽のデメリットも紹介しておきます。
- 発根しない(=枯れる)リスクがあること
- 手間がかかること
「手間」についてはこれから記載する手順を行うことをどう感じるかというだけですが、「発根しない」=「枯れる」ということです。
発根率は100%ではないので、蒔いた種や発芽した苗が少ない方や軸切り挿し芽の作業に慣れてない方は無理にする必要はありません。
せっかく発芽した苗を大切に育てて、ゆっくり大事に育てて、素敵な盆栽に仕立ててください。
盆栽を育てる上で1番大事なことは、「水やり以外、できるだけ何もしないこと」です。
準備するもの
- 黒松の苗
- 鋭利なカミソリ
- 発泡スチロールや人参の輪切り
- 用土を入れた容器
- 竹串や箸
鋭利なカミソリは近くのスーパーにも売ってあると思います。ガードなどがついていない方がやりやすいと思います。
容器はビニールポットかスリット鉢がよいと思います。
竹串や箸、発泡スチロールなどは100円ショップでも手に入れられますので、ぜひ探してみてください。
軸切り挿し芽をする適期・タイミング
それでは、最も大事な「軸切り挿し芽をする適期・タイミング」の見極め方を紹介します。
だいたい毎年5月ぐらいが適期となりますが、地域差もあるので以下の見極めポイントを確認してください。
- 根元の軸が赤くなったとき
- 葉が開き、真ん中の本葉が伸びてきたとき
どちらか一方、もしくは両方の条件が成立したら軸切り挿し芽の適期です。
次章の手順に従って、軸切り挿し芽をやりましょう。
軸切り挿し芽の手順
それでは、軸切り挿し芽の手順を紹介していきます。
発芽した黒松の苗を発泡スチロールの上に置きます。
ちなみに輪切りにした人参や大根の上でも大丈夫みたいで、カミソリの刃が切れ込むような柔らかい素材がよいです。
葉の1.0cm〜1.5cm下を鋭利なカミソリで優しく切ります。
軸の色が途中から赤色に変わっているところがあり、色が変わる境目を切る方もいるので、お好みで。
最も大事なことは絶対に軸を潰さないことです。
鋭利なカミソリであれば、上に優しく乗せて軽く引くだけでスパッと切れると思います。
必ず新品のカミソリを使うようにしてくださいね。
切った苗は水もしくはルートン水溶液やオキシロベンに1時間ぐらい漬けておきます。
(ルートンもしくはオキシロベンの効果があるかは微妙なところで、おまじない程度と考えもらって良いかと…)
なお葉っぱの方でなく、切った軸が水に浸かるようにしてください。
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苗を水に浸している間に、容器に用土を入れて挿し芽の準備します。
(軸切りする前に準備しておいても問題ありません)
用土は赤玉土単用でも良いですし、桐生砂を混ぜたものでも大丈夫ですが、できるだけ「細粒」など細かい用土を使うようにしましょう。
(写真の用土はゴールデン粒状培養土です)
鉢底は水捌けをよくするためにゴロ土を入れておきましょう。
用土を入れ終わったら腰水して、たっぷりと水に浸しておきます。
用土を入れた容器の真ん中に竹串などで穴を空け、水に浸しておいた苗を穴の中に優しく入れます。
(挿し芽する前にルートンの粉をつけても良いです)
穴の大きさが不十分だったから…と苗で乱暴にグリグリと穴を拡張したりしないようにしてください。
もし微塵があるなら、穴に挿した苗のまわりに微塵を入れ、苗を固定できるとなお良いです。
最後の仕上げです。
容器ごと水に浸して(腰水)し、用土をシメてしっかりと苗を固定します。
苗の上から「U字」に曲げた針金を苗の上から固定しても良いです。(苗の生長を妨げてしまうので、芽は避けて固定してくださいね)
苗が動かないように固定できれば、やり方は自由です。
(ちなみに私は風が当たらない倉庫の軒下に保管します)
これで作業は終了です。お疲れ様でした。
アフターケア
軸切り挿し芽をした苗は、明るい日陰で風もできるだけ当たらない場所で管理してください。
植物は風などでフラフラ動いてしまうと、根の生長を止めてしまいます。
用土は乾かないようにしっかり水やりします。
毎日水やりしてよいですし、根腐れの心配もないので、薄く水を張った容器にポットごと漬けておくのも一つの手です。
(但し、発根したら根腐れしますので発根してそうだなと思ったらすぐに水から出してください)
軸切り挿し芽後、2週間ぐらいすれば発根します。苗を少し触ってみて、動かないようであれば発根しています。
発根していない苗はもう1〜2週間待ってみるか、それでもダメなら諦めましょう。
発根した苗は徐々に日当たりが良い場所でしっかり水やりして管理しましょう。
まとめ
いかがでしたか?
少し多めに種蒔きして、軸切り挿し芽に挑戦してみてくださいね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。