黒松は「短葉法」と呼ばれる技術が知られるまで盆栽の主役にはなれず、主役は五葉松でした。
元気な黒松であれば新芽が長く伸び、その結果、針葉や枝も長くなるため、とても盆栽に向いている樹種ではありません。
それでも黒松を盆栽にしたい方は、肥料や水を控え、樹を弱らせることによって、新芽の伸びを抑えて盆栽に仕立てていたそうです。
「短葉法」が広く知られてからは、針葉や枝を短くつくることができるようになり、黒松は盆栽の主役として人気になりました。
現在、「短葉法」は本格的な黒松盆栽をつくる上で必ず使われる技術となっています。
この記事では短葉法の代表的な作業である「芽切り」の作業方法や作業時期や気をつけるポイントについて紹介します。
似たような作業で「芽摘み」や「芽かき」がありますが、それらは別記事で紹介します。
「芽切り」は黒松盆栽をつくる上で絶対に知っておいてほしい基本の作業です!ぜひマスターしておきましょう!
盆栽士
ちちりん
はじめまして、ちちりんです。盆栽歴(趣味)3年のサラリーマンです。1軒屋の庭(裏)で200株以上の盆栽苗を育てています。
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芽切りとは?
春に出た新芽(1番芽)を夏に切ることを「芽切り」と呼んでいます。
夏に1番芽を切ることで、松は慌てて2番芽をつけます。
その2番芽を育てることで針葉の長さや枝の長さを短く調節することでき、この一連の技術を「短葉法」と呼んでいます。
また、芽切り後の2番芽は、2個以上の芽をつけることが多く、樹づくり(特に枝づくり)中の黒松において枝数を増やすことにも一役買っています。
ただし、樹の個体や樹齢によっても差があるため、「芽切りをすれば、必ず本格的な黒松盆栽が作れる」とはならないので注意が必要です。
松は通常、年に1回しか芽を出しません。
しかし、芽切りをした樹は年に2回芽を出すことになるため、樹にはかなりの負担を強いることになります。
樹勢が落ちている樹や枝は芽切りを見送るようにしてください。
芽切りをするメリット
芽切りのメリットは以下の2つです。
- 針葉を短くできる。
- 枝数を増やすことができる。
枝数が多いほど樹格があがり、針葉が短いほど引き締まった樹となります。
本格的な黒松盆栽を目指すなら、「芽切り」作業は必ず覚えてましょう。
芽切り前の準備・注意事項
芽切りをすると、樹にはとても負担をかけることになります。
樹勢が落ちている樹に芽切りをすると枯れる可能性もありますので、樹勢が強く元気な樹だけ芽切りをするようにしてください。
樹勢が強く元気な樹にするためには、前年から肥料を施し、普段から日当たりのよい環境下でしっかり水やりを行うことが大切です。
3月の植え替えで根を切り詰めた樹は樹勢が落ちている可能性があります。
樹の状態(芽の伸びや針葉の状態など)をよく観察し、樹勢が落ちているようであれば、芽切りを控えましょう。
それから、芽切りする剪定はさみにも注意しましょう。
切れ味の悪い剪定はさみで大事な盆栽を失ってしまうかもしれません。
おすすめの剪定ハサミは以下の記事で紹介しています。
芽切りの時期
芽切りをおこなう時期は、樹の大きさ(もしくは目指している樹の大きさ)によって異なります。
針葉や枝を短くしたければ、できるだけ時期を遅らせて芽切りをします。
但し、大品盆栽なのに7月下旬に芽切りし短い針葉や枝をつくっても、全体のバランスが悪くなる場合が多く、樹形が乱れると盆栽として価値が下がります。
樹形や樹の大きさ、枝ぶりを考えて、芽切りをおこなう時期を見極めましょう。
以下に目安の時期を記載しておきますので、これをベースに調整してみてくださいね。
- 大品・貴風サイズ:6月上旬〜6月下旬
- 中品サイズ:6月下旬〜7月中旬
- 小品・ミニサイズ:7月中旬〜8月
芽切りの手順
芽切りをするためには、最初に樹をよく観察することからはじめます。
芽切りは樹全体の樹勢バランスが均等になるように調節しながら行います。
樹齢が古い老木(完成木)であれば、樹全体の樹勢バランスが均等になりやすく、同じタイミングで芽切りを行うことができますが、樹齢が若い木や苗木は枝によって新芽の伸びがかなり違います。
なので、枝の強弱によって芽切りするタイミングをズラし、最終的に芽の伸びが全体的に均一になるように調整することが大切です。
上記を踏まえ、手順を紹介します。
一般的に下枝(樹の下の方にある枝)や幹元の枝から吹いた新芽は弱く(短く)、樹冠部や枝先の新芽は強い(長く)傾向にあります。
※樹齢が古い樹も念の為、確認しましょう。
それぞれ新芽を確認し、以下のとおり判定してください。
- かなり弱い芽 ←切らない
- 弱い芽または普通の芽 ←切る(STEP2へ)
- 強い芽 ←1〜2週間後に切る(STEP3へ)
STEP1で「普通の芽」と判定した新芽を切ります。
切る場所は、去年の芽と今年出た新芽の境目より少し先の方です。
しかしながら、「芽切り後に必ず2番芽が吹く」という保証はありません。
2番芽が吹かなかった場合に代わりとなる芽がある新芽を切るようにしましょう。
(例えば役枝で、将来立て替えるための別の芽がない場合は、芽切りをしない場合もあります)
黒松は歳をとるにつれてどんどん樹が大きくなるため、いづれはどこかのタイミングで切り戻し(追い込み)を行う必要があります。
単純に伸びた枝を切り戻しても、新たな枝が生えるわけではありません。
枝の途中(特に幹に近い場所)に吹いた芽や胴吹きした芽を大切に育てておき、枝を立て替える時に使います。
これを繰り返すことでどんどん樹の格があがり、間延びした枝がない樹として長く愛されるようになります。
この辺りの判断はとても難しく、個人差があります。
安全最優先の方は、無理に切る必要はありません。
普通の芽を切って1〜2週間後、強い芽を元から芽切りします。
この2回目の芽切りを忘れてしまうと大変なことになりますので、忘れないように気をつけましょう。笑
この「1〜2週間の間隔は樹の樹勢や新芽の強弱にどのくらい差があるのかで異なりますので、樹の状況で判断して下さい。
なお、芽切りする時期をズラさず、芽切りする場所をズラす方法があります。
伸びている新芽の軸を長く残して切ることにより、松は芽を切られたことに気づくのが遅れるそうです。
試しにやってみましたが、上手くいかなかったのであまりおすすめしません。
ちなみに芽切り後に2週間ぐらい経つと、以下のように新芽が吹いてきます。
去年の秋〜冬に葉透かしを行ってなければ、芽切りと合わせて葉透かしを行います。
葉透かしの方法は別記事で紹介します。
芽切り後のアフターケア
芽切り後の樹は、少しの間、直射日光を避けて管理します。(明るい日陰などで管理しましょう)
芽切り後に直射日光を受けると「芽止まり」となり、芽吹きが悪くなってしまいます。
そして毎日の水やり時、葉水をすると2番芽の吹きが良くなるため、意識的に葉にも水をかけると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
黒松盆栽において、年間作業で最も盆栽らしい作業です。
上手に「芽切り」を行うことで、引き締まった枝数を増やし、あなたの黒松盆栽の樹格をあげてくださいね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。