自然界で育つ木とは異なり、鉢の中で育てる盆栽は土の量が限られているため、肥料による栄養補給が必要です。
しかしながら、ホームセンターで探したり、インターネットで検索すると、いろんな種類の「盆栽用の肥料」が存在しており、初心者には、どの肥料を選んだら良いのか、とてもわかりづらくなっています。

どの肥料をあげれば、黒松盆栽が太くて元気になるのか…。
この記事では、黒松盆栽に適した肥料の選び方、与え方(やり方)、時期、量、そしておすすめの肥料を紹介します。
適切な肥料を施して、太くて魅力ある黒松盆栽にしましょう。
肥料の目的

盆栽における肥料を与える主な目的は以下です。
- 健康な木をさらに元気にするため
- より太くて立派にするため
黒松盆栽では、芽摘み・芽切り・芽かきなどの作業で樹木にとても負担をかけます。
しかしながら、この作業は樹勢が強い(つまり元気がある)ことが前提であり、樹勢が弱い場合はその年の作業を見送ることもあります。
日頃から元気な状態を保つことが盆栽をつくるうえで最も大事なことです。
一方で、樹勢が弱い(元気がない木)に対して肥料を施すことは得策ではありません。
元気がない木に肥料を与えると、もっと元気がなくなります。
直射日光が当たらない環境下で管理し、元気になるまで肥料は控えましょう。
さまざまな肥料

肥料にはたくさんの種類がありますので、それぞれの特徴を確認しましょう。
盆栽で使われる肥料は以下の2つです。
- 有機肥料
- 無機肥料(化学肥料)
有機肥料は天然由来成分で作られた肥料で、微生物に分解されることによって、栄養素に変わります。代表的な肥料として、 “油かす” があります。
化学肥料は地球上にある鉱物を、化学合成により人工的に作ったもので、水に溶けてイオン化し、根から吸収されます。一般的に効果の割に安価であり、大量に培養する環境下でも、その効果を発揮します。
また昨今では、化学肥料に有機物を配合した有機化成肥料なども盆栽ではよく使用されています。
肥料の形状は固形・顆粒・液状の3つがあります。
固形肥料

盆栽でもっとも多く使われている形状です。
肥料の効果期間を過ぎても同じ形状のまま残っていることが多く、肥料交換がしやすいことが特徴です。しかしながら、風や雨で鉢やポットから転がり落ちることがあるため、肥料バックに入れたり、針金で固定して使うことを推奨します。
顆粒肥料

盆栽よりも花や野菜などの菜園などで多く使われてる肥料です。
花や野菜に使われることが多いので、盆栽用に限らなければ、最も多い肥料の形状となります。
肥料の効果期間が過ぎれば、そのまま溶けて、土に混ざってしまう種類が多く、肥料交換の手間が不要です。
液体肥料

化学肥料であることが一般的で、水に薄め、灌水もしくは底面給水により施します。化学肥料のため速効性が高く、盆栽では補助肥料として使われることが多いです。
速効性(すぐ効く)と緩効性(ゆっくり効く)があります。化学肥料や液体肥料は速効性のものが多く、有機肥料は緩効性のものが多いです。
一般的に盆栽にはゆっくり長く効く「緩効性」の方が適していると言われています。
理由はゆっくり分解されて、根焼けなどの肥料過多によるトラブルを防ぐことができるからと言われていますが、近年は技術も進化しており、適正な量であれば、問題ないでしょう。
肥料は適正な量を守ってあげましょう。
盆栽に必要な栄養素とその効果

植物には、生育に欠くことの出来ない必須元素があります。その大部分である以下の元素は空気や水、土の中に多量に含まれており、呼吸や光合成によって取り込むことができます。
- 酸素 (約80%)
- 水素 (約9%)
- 炭酸 (約5%)
しかしながら、盆栽では清潔な無肥料の用土を使用するので、自然環境であれば取り込むことができる養分を得ることができません。さらに小さな鉢の中で生きている盆栽には養分を蓄える量も限られています。
そのため、盆栽には必要な栄養素を肥料で補う必要があります。
様々な栄養素の中で、肥料の3要素と言われる「窒素」、「リン酸」、「カリウム」は、植物の生育上たくさんの量が必要となります。
窒素(N)

植物のたんぱく質を構成する成分で、生育において最も重要な要素と言われています。黒松盆栽においても、葉や茎の生育を促進する上で最も多く必要な栄養素です。
窒素が不足すると葉が黄色くなり、過剰に与えて過ぎると病気や害虫に対する抵抗力が低下します。
リン酸(P)

窒素と同様、植物のたんぱく質を構成する成分の一つですが、花や実の形成に多く必要となる栄養素のため、黒松盆栽において、量は必要ありません。
また、リン酸は根が吸収しにくい栄養素と言われており、特に赤玉とは相性が悪いようです。黒松盆栽では量は必要ありませんが、実物盆栽や花物盆栽を育てている方は注意しましょう。
カリウム(K)

主に植物の根の発育を促進する成分で、免疫力も向上し、病気にかかりにくくなると言われています。
カリウムが不足すると、植物内の水分が調整できなくなり、蒸散しすぎてしおれてしまいます。また、病害虫への抵抗力も落ちます。

窒息(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の他に、カルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)、硫黄(S)が次に植物に必要な栄養素と言われていますが、黒松盆栽を育てる上で特に神経質にはなら必要はありません。肥料の3要素を気にすれば問題ありません。
肥料を与える時期

肥料は春から初夏にかけての伸長生長に合わせて肥料を与える「春肥」と秋から休眠期前にかけての肥大生長に合わせて肥料を与える「秋肥」があります。また、肥料を与えてはいけない時期もありますので、注意しましょう。

春から初夏にかけての伸長生長に合わせて与える肥料を春肥と言います。地域の気温差によって、与える時期は異なります。目安としては、新芽が動き出すより少し前から梅雨入り前までがベストです。
窒素分をよく吸収する時期のため、与える肥料は窒素分が多い方が肥料をおすすめします。但し、徒長や枝の間延びを補助してしまう恐れもありますので、気持ち少なめに与えるようにしましょう。
- 有機肥料(緩効性)
- 窒素(N)が多い
- 量は気持ち少なめ

夏の終わりから休眠期前までの肥大生長に合わせて与える肥料を秋肥と言います。こちらも地域の温度差によって前後しますので、目安としてください。
春肥と異なり、リン酸やカリウムもよく吸収するため、リン酸やカリウムも多くてバランスのとれた肥料を与えることをおすすめします。
この時期に幹が太くなりやすいです。少しでも肥料を多めに吸収させるために日頃から樹勢管理をしっかり行いましょう。(樹勢が弱っている樹に肥料を与えないようにしましょう)
- 有機肥料(緩効性)
- 窒素(N)もリン酸もカリウムも多めがよい
- 量は気持ち多め

以下の時期に肥料を与えるのはやめましょう。
- 梅雨
- 真夏
- 休眠期(冬季)
- 植え替え直後
梅雨時期は枝が徒長しやすく、長雨によって肥料分も流れてしまします。真夏や休眠期は成長が止まっており、栄養の吸収も低いです。植え替え直後は根も切られてたりて樹勢も弱っているため、肥料は控えましょう。樹勢が弱っているときに肥料を与えると、もっと樹が弱ってしまいます。
おすすめの肥料

黒松盆栽におすすめの肥料を紹介します。
「油かす」の代表。ホームセンターなどでも売られており、入手性も高く、盆栽用肥料としても最もポピュラーな肥料。欠点としては、有機肥料なので虫(ハエや蛆)が湧き、カビも発生します。マンション・アパート・住宅地などに住んでいる方やにおいなどを気にする方にはあまりおすすめしません。
N:窒素
P:リン酸
K:カリウム
40日~50日で交換(60日で完全終了)
マルタの玉肥は、昔ながらの一番しぼり菜種油かすから生まれた絶妙の配合。100年の歴史が培った逸品肥料です。プロの園芸家が認める達人の肥料。昔ながらの一番しぼり菜種油かすから生まれた絶妙の配合が生み出す、確かな品質をお届けします。
マンション・アパート・住宅地に住んでいる方におすすめの肥料です。愛好者も多く、有名な肥料です。置いたときと回収するときに肥料の形が変わらないので、「効いた」感がないのが欠点です。
N:窒素
P:リン酸
K:カリウム
肥料は乾いていると成分が溶け出してこないので、乾燥している状態といつもぬれている状態で肥効期間が変わります。(最低1か月は効くようになっています)
- 乾いている場合は肥効期間が1か月半~2か月
- 通常の水やりの場合(朝晩の水やりの場合)は1か月~1か月半
- 油かす・魚粉・米ぬかなど 花・葉・根に効く栄養がいっぱい!
- におわない・かびない・虫がつかない為、室内でも安心してご使用になれます。
- 有機質肥料ですのであらゆる植物にご使用になれます。
- さまざまな植物の追肥に使いやすい中粒状です。
- 東商独自の特殊醗酵菌の働きにより、植物の栄養吸収を助け、土を元気によみがえらせます。
- ベランダ園芸などで、匂いの出ることを嫌う場合などにも便利です。
- 睡蓮の肥料にぴったり! 鉢の土の中に埋めてご使用ください。
液肥の代表で、ホームセンターなどでも手軽に購入できます。盆栽は2000倍に薄めて使うように推奨されており、10Lの水に5ml(キャップに1/4杯)で調整可能です。特徴として、苔が生えやすい(増殖しやすい)ように感じます。コスパ最強!
N:窒素
P:リン酸
K:カリウム
2週間(使用間隔は2週間に1回)
- 与えて効果がすぐに現れる速効性で、草花から野菜まで、いろいろな植物に使えます。
- リンサンを多く含む「山型」タイプで、植物を大きく育て、花数を増やし、次々と花を咲かせます。特に根の生育が良くなり、植物を健全に育てます。
- 一般的な土から畑の土まであらゆる土に優れた肥料効果があります。
- pHは、6~7の弱酸性です。
まとめ

黒松盆栽に適する肥料は以下となります。
- 有機肥料(緩効性)
- 与える時期や量は肥料の説明書とおりに
- 窒素とカリウムが多めがよい
結論、「油かす」を適切な時期に適切な量を与えることで問題ありません。下手に肥料を与えすぎて調子が悪くなる可能性があるので注意しましょう。
2024年には各肥料による成長度合いを実験・観察したいと思います。実験の内容や結果を知りたい方は、ぜひSNSのフォローをお願いします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。