小さな鉢の中にいる盆栽は、年数が経つと根が充満し水捌けが悪くなってきます。
なので盆栽は数年に一度根を切って、新しい用土に替える必要があります。
この記事では、植え替えの目的や手順、頻度や時期、ちょっとしたコツや注意点などを紹介しています。
初心者は必見、ベテランは作業前にぜひ確認してくださいね!
盆栽士
ちちりん
はじめまして、ちちりんです。盆栽歴(趣味)3年のサラリーマンです。1軒屋の庭(裏)で200株以上の盆栽苗を育てています。
詳しいプロフィールはこちら
植え替えの目的と重要性について
植物は枝葉だけでなく、「根」も生長します。
根は水や養分を吸収する植物にとってとても大切なもので生命線です。
その根が健康に育つためには、鉢内や鉢土の通気性や水はけが良いことが絶対条件です。
ところが、盆栽を何年も植え替えずにいると鉢内に根が充満します。
そして、水や空気を通さなくなり新陳代謝が低下して、栄養が十分に行き渡らなくなります。
なので、適切なタイミングで伸びすぎた根を切り戻して整理し、新しい用土に替える必要があり、この一連の過程を「植え替え」と一般的に呼んでいます。
但し、鉢を変えることを目的として根を切ったりせずに用土と鉢を変えることもありますし、根張りを作るために鉢を変えず(元々植えていた鉢に戻す)根も充満していないけど根を切り戻して整理することもあります。
目的によって作業内容が異なりますので、植え替えの目的を定めてから作業を行うようにしましょう。必要ない作業は出来る限り控えるようにしましょう。
植え替えするタイミング・時期
通常、植え替えでは「根」を切ります。
根を切ると樹が弱り、芽の伸びが悪くなったり場合によっては枯れてしまうこともあります。
なので、植え替えはある程度根が充満してきたタイミングが良く、樹種、鉢の大きさ、樹の状態や使っている用土などにもよっても異なりますが、若木なら2~3年に1度、老木なら3~4年に1度ぐらいの目安が良いです。
植え替えのタイミングが早すぎるのはよくありませんが、鉢の底穴を除いた時に鉢底ネットが見えなくなっていたり、土の表面が固まって水を全然吸わなくなるまで植え替えしないのもよくありません。
そんな時は、早々に植え替えしましょう。
植え替えに適した時期(季節)は3月中旬~4月初旬の新芽が動き出す時期がよいです。
根が活動をはじめるタイミングなので、切り戻した根の回復が早いと言われています。
植え替えに必要な道具
植え替えの時にあったら便利な道具を紹介しておきます。
- 根を切るためのハサミ
- 歯科用ピンセット
- 鉄製の箸や割り箸を研いだものや竹串など
- ふるい(ザル)
- 鉢底ネット
- 針金(アルミ線1.5〜2.0mmぐらい)
- 土入れ
他の道具は100円ショップで揃えることができますので、安く仕入れちゃってくださいね。
植え替え前の準備
植物の根は乾燥すると枯れてしまいますので、鉢土から出した樹は可能な限り新しい鉢土にいれてあげる必要があります。
スムーズに植え替え作業を行うために、事前準備が大切です。
- 植え替え前に2~3日間水やりを控える
- 鉢を選んでおく
- 鉢に鉢底ネットを切って固定しておく
- 鉢と樹を固定するための針金を鉢底に通しておく
- 鉢底石(ゴロ土)を敷いておく
- ふるいにかけて微塵を取り除いた用土を準備しておく
- 元肥を準備しておく
根の用土を取り除きやすくすために植え替え前は2~3日間ぐらい水やりを控え、用土を乾燥させておきます。
寒い時期なので、そもそも水やりは2日に1回ぐらいしか与えていないと思います。1回だけ水やりを控えるイメージですね。
黒松盆栽の水やり植え替え後の鉢を選び、鉢底ネットと樹と鉢を固定するための針金を通しておきましょう。
鉢の候補が複数ある場合、すべての鉢に鉢底ネットを固定しておいても問題ありません。
黒松盆栽の鉢選び鉢の準備ができたら、鉢底石(ゴロ土)を入れておきましょう。
用土はふるい(ザル)にかけて微塵を取り除き、混ぜておきましょう。
黒松盆栽の用土元肥は必須ではありませんが、入れるならマグァンプKがおすすめですね。
緩効性肥料のものを使いましょう。
植え替えの手順
それでは植え替えの手順を紹介します。
参考画像ではポット苗から駄温鉢への植え替えを参考で紹介しており、鉢合わせなどは省略しています。
針金のつけ方は多種多様なので、簡単に取れなければ、ご自身の好みで大丈夫です。
鉢裏に穴が1〜2つある場合や穴がない場合など様々なパターンがあります。
穴が2つ以上あれば、それぞれの穴から長めの針金を2本通しておきます。
穴が1つの場合、もう一つは鉢底ネットを張った穴から通します。
穴がない場合は鉢底ネットを張った穴で、鉢底ネットを固定しながら樹を固定する針金を通しますが、ミニ盆栽や小さい苗木などは固定しない場合もあります。
風が当たっても、樹がグラグラしなければ大丈夫かと思いますが、心配な方は麻紐で固定しましょう。
水捌けを良くするために薄く鉢底石(ゴロ土)を敷きます。
ここでは日向土を敷いています。
用土は赤玉土と矢作砂と桐生砂を混ぜたものを使っています。ふるい(ザル)にかけて微塵を取り除いています。
マグァンプK(中粒)を適量入れます。
100円ショップで買った調味料入れに入れて使っています。たくさん植え替えする方はおすすめです。
ポットや鉢から抜きます。
根の生育状態などをしっかり確認しましょう。根がしっかり張っていれば元気な証拠です。
また黒松は「共生菌(菌根菌)」がついていることが多く、黒松と養分を供給し合って共生している菌なので、植え替え後の土にも少し混ぜてあげることをおすすめします。
黒松を含む松柏類は根を切りすぎると枯れてしまいます。もみじなどの雑木類と異なり、全体的に1/2ぐらいは残すようにして、太根だけを切るようにしましょう。
無理はいけません。どうしても気になる太根があってても、次の植え替えタイミングまでグッと我慢するこという選択がとても大事になります。
そして、根の絡まりはできるだけ解くようにしましょう。綺麗に放射状に広げて植え付けて、将来の根張りを期待します。
鉢の正面に気をつけましょう。
鉢に傷がない方が正面で、鉢裏に落款がある場合は正しく落款が読める向きをそのまま裏返した向きが正面となります。(詳しくはこちら)
1 : 1.6の法則を意識しましょう。
ちょっとしたコツになりますが、人間が最も美しく見える黄金比というものがあります。
要は鉢のど真ん中に樹を植えるのではなく、若干ずらして植えた方が美しくということです。
もちろん樹によりますので、全ての盆栽が該当するわけではありません。盆栽は「流れ」を大事にしていますので、流れがある方の空間を空けるイメージで1 : 1.6の割合でズラして植えてあげると、より盆栽が美しく見えます。なお左右だけでなく前後もズラしてあげると、さらに良いですね。
それから、「根張り」を見せるために少し高植えすると良いです。鉢上より根が出るように植えてあげるとより盆栽の価値があがります。
樹の根元を固定用の針金で固定します。
針金は引っ張って捻るようにしましょう。力任せに締め過ぎて針金を捻じ切ってしまったり、根を締めすぎ痛めにないように気をつけましょう。
鉢の中に用土を入れたあと、箸や竹串などで用土をすき込みます。
準備した箸や竹串を鉢奥までしっかり刺し、左右にグリグリやって隙間を空け、隙間に用土を入り込ませます。(全体にグリグリやって下さい)
根の下までしっかり用土を入れ込みましょう。
植え替え後の水やりは、腰水をおすすめします。
ミニ盆栽など小さなものは、水で湿らせた水苔を薄く張り、用土の流出と水切れを防ぐと安心です。
植え替え作業はこれで完了です。
お疲れ様でした。
植え替え後のアフターケア
植え替え後、1週間程度は直射日光を避けて明るい日陰かつ風があまり当たらない場所で管理し、徐々に日当たりの良い場所に慣らしていきましょう。
水切れには特に注意してください。
肥料は植え替え後1ヵ月間は控えるようにしましょう。根の回復が最優先です。
まとめ
いかがでしたか。
黒松盆栽の植え替えを紹介していますが、他の樹種でも基本はあまり変わりません。
植え替えは根の負担が大きく、枯れるリスクもありますので、事前準備をしっかりしてから行うようにしましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。