「盆栽」にどんなイメージがありますか?
難しそう、高齢者の趣味、手間がかかりそう…そんな印象を持つ人も少なくないでしょう。
わたしは祖父が趣味で盆栽をたくさん持っていたので、「おじいちゃんの趣味」という認識でした。
しかし、盆栽はただの趣味にとどまらず、日本の美意識を凝縮した芸術であり、小さな鉢の中で自然の壮大さを表現する奥深い世界が広がっています。
この記事では、盆栽の基本的な定義やその起源、種類と分類方法、そして表現方法の違いなどを詳しく解説します。
初心者でも理解しやすいようにその魅力を分かりやすく紹介していきますので、ぜひ新しい視点で「盆栽」を楽しんでみましょう。
ぜひ、あなたの盆栽を見せてくださいね。
盆栽士
ちちりん
はじめまして、ちちりんです。盆栽歴(趣味)3年のサラリーマンです。1軒屋の庭(裏)で200株以上の盆栽苗を育てています。
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盆栽とは
盆栽は単なる植物の栽培ではなく、木や草花を小さな鉢の中で育て、自然の風景や樹木の姿を縮小して表現する日本の伝統的な園芸技術です。
剪定や整枝、植え替えなどの技術を使って、樹形や全体のバランスを整え、自然の景観や季節の移ろいを身近で楽しみます。
「盆(ぼん)」は鉢などの入れもの、「栽(さい)」は植物を意味し、「生ける芸術」ともいえます。
鉢と植物、幹と枝、枝と葉などとの調和を考えて樹形をつくり、小さな空間に壮大な自然を表現することを醍醐味としています。
盆栽の起源
盆栽の起源は古代中国に遡ります。
「唐」の時代(618~907年)では「盆景(ぼんけい)」と呼ばれたものが壁画に描かれています。
日本でも鎌倉時代の絵巻物「春日権現験記絵(かすがごんげんけんきえ)」に「盆山(ぼんざん)」と「石台(せきだい)」が描かれています。
盆山は、石の上に土を盛り、木を根付かせた「石付き盆栽」のようなもので、石台は、取手の付いた木製の箱で、この中に盆山を1つ以上飾って絵が描かれています。
日本では、鎌倉時代から”盆栽もどき”が始まってるんですね。
室町時代になってからは武家や公家の趣味として親しまれ、「蔭涼軒日録(いんりょうけんにちろく)」では足利義政や足利政知が盆山を気に入っていたような様子が記録として残っています。
戦国時代になってからも「兼見卿記(かねみきょうき)」には、織田信長や徳川秀忠が盆山を愛好していた記録が残っています。
江戸時代に入ってからは「草木錦葉集(そうもくきんようしゅう)」、「井関隆子日記(いせきたかこにっき)」、「春宵梅之宴(しゅんしょううめのうたげ)」などに盆山が描かれており、人工的な造形美と白地の陶器に青い顔料で華麗な絵文様を入れるいわゆる「染付」と呼ばれる鉢が流行が描かれています。
そして、江戸時代の後半より中国から輸入された鉢に植えた盆栽が登場してきたと言われています。
樹木の造形も中国画をお手本に仕立てられ、「盆栽」という名称が定着していきました。
江戸時代には絵をつけた鉢に植物を植えて飾るようになりました。
明治時代には、盆栽が皇后に飾られるようになり、盆栽を専門とする業者「盆栽園」が登場してきます。
昭和時代には、第一回国風盆栽展(1934年)が初めて開催され、盆栽の輸出なども盛んになり、世界へ広がっていきました。
盆栽の種類
盆栽にはさまざまな種類があり、それぞれの樹形や特徴に基づいて分類されています。
代表的な盆栽の種類を紹介します。
盆栽では主に、松柏盆栽、雑木盆栽、実物盆栽、花物盆栽、草物盆栽に分類されます。
常緑樹のマツ類と真柏(しんぱく)をまとめた盆栽用語です。
盆栽の代表格で寿命が長いことが特徴で、枯れにくく初心者でも扱いやすい樹種です。
もみじ、けやき、楓(かえで)など花や実を主な鑑賞目的にしない落葉樹を指します。
新芽、新緑、紅葉、落葉など四季の変化を楽しめることが特徴です。
姫リンゴ、柿や花梨(かりん)など実をつけた姿の鑑賞を目的とした樹種を実物盆栽と呼びます。
秋から冬にかけて果実が実る樹種が多く、鑑賞と収穫の楽しさを両方味わうことができます。
桜や梅、さつきなど花の鑑賞を目的とする樹種を花物盆栽と呼びます。
その一瞬にきれいな花を咲かせるためだけに対して、かなり手間がかかることが多く上級者向けです。
スミレやシダ類などの樹種があり、他の盆栽と組み合わせて飾られるが多いです。
日常の生活空間に取り入れやすく、限られたスペースでも楽しむことができます。
盆栽では大きさによっても分類されます。
樹高60cm以上が大品盆栽、樹高20〜60cmのものを中品盆栽、20cm以下を小品盆栽と呼び、さらに10cm以下を豆盆栽と呼んでいます。
樹木の形によっても盆栽は分類されます。
代表的な樹形としては、まっすぐに幹が伸びた直幹(ちょっかん)、盆栽の代表的な樹形である模様木(もようぎ)、幹が斜めに成長した斜幹(しゃかん)、幹が鉢の縁を超えて垂れ下がるように成長した懸崖(けんがい)、幹が長細くて枝が控えめな文人木(ぶんじんき)などがあります。
他にもいろんな樹形がありますが、一旦は上記を知っておけば大丈夫です。
参考までに樹形のリンク先を紹介しておきます。
盆栽の特徴
盆栽にはさまざま特徴があります。
鑑賞したり価値を判断する上でも大事なポイントなので、しっかり覚えておきましょう。
盆栽の各部位のつくりには名称がつけられており、鑑賞する上でのポイントとなります。
まずは「根張り」です。
土の表面より上に出て見える根元の部分です。
四方八方に伸びしっかりと土をつかむような根張りが理想です。
次は「立ち上がり」に注目します。
立ち上がりは力強さを示しており、この部分が自然で滑らかに伸びていると、樹木全体に安定感が生まれます。
その次は枝の配置に注目します。
「一の枝」や「二の枝」は、盆栽の立体感を作るために欠かせません。
一の枝は最も太くて一番下にあり、左右のバランスを保ちます。
二の枝は少し上に配置され、全体の動きを調和させます。
さらに上にいくに従って、幹や枝が段々細くなっていることが大切です。
これを「コケ順」と呼びます。
また、枝が重なり合わないように「枝棚」を作り、各層の枝が独立して見えるように配置します。
これにより、樹木の「樹冠」(樹の頂上部分)が美しく広がり、全体のバランスが整います。
最後は葉や花、実などの鑑賞を楽しみます。
花物盆栽や実物盆栽であれば、むしろ花や実のほうがメインの場合もあります。
雑木類であれば葉の紅葉を楽しめたりしますし、同じ樹種でも個体差がありますので、じっくりと観察してみてくださいね。
盆栽には「表」と「裏」があり、それぞれ異なる役割や美的要素を持っています。
盆栽の表とは、360°全方向から眺めた際、最も美しいと感じる面を指します。
裏はその反対側です。
この表と裏の設定をしっかり決めて作り込むことで、盆栽をより魅力的に見せることができます。
初心者の方に表と裏の判別はかなり難しいです。
初めは、なんとなく見栄えが良い方を表にすると良いと思います。
参考までに「表」を選ぶ特徴を紹介します。
- 幹の流れと立ち上がりがよく見える
- 根張りが前と左右に張っていることがよくみえる
- 見る人に向かって(手前)少しお辞儀しているように見える角度であること
裏の方は盆栽の奥行きを表現するために枝を多くつけると良いでしょう。
盆栽の成長に応じて表裏が変わることもあるため、定期的に剪定や配置を見直すと良いです。
盆栽において、幹や枝には左右どちらかの方向があり、これを「流れ」と呼んでいます。
「流れ」も初心者の方にとって、難しいと思います。
たくさん盆栽をみることで、流れを学んでみてくださいね。
流れ側の最も太い(強い)枝を「効き枝」、反対側の枝を「受け枝」と呼び、これらの枝でバランスを取ることで全体に一貫性と動きを持たせ、より美しい盆栽を仕立てることができます。
盆栽において「鉢」との組み合わせは、木の魅力を最大限に引き出すために非常に大切です。
盆栽は木と鉢が一体となって美しさを表現する芸術なので、適切な鉢選びが作品全体の完成度を左右します。
鉢の形や色、大きさなどを考慮して、木とのバランスを取ることが大切です。
樹種や樹形などにあった鉢の形や色を大きさを選ぶ必要があり、例えば小品サイズの模様木風の黒松盆栽であれば、泥物の長方鉢がよく合うとされています。
さらに小さめの鉢に黒松らしい太くて逞しい幹を入った姿はとても感慨深く、観賞価値をさらに高めてくれます。
一方、雑木類となるヤマモミジなどは少し明るめの色(青や白)の底が浅い楕円鉢などがよく合うとされています。
新緑の緑や秋の紅葉など、四季の変化を楽しむ樹種と相性がよいとされています。
鉢の大きさは木のサイズに応じて選ぶ必要があります。
特に「根張り」が広がっている場合は、鉢があまりにも小さいと不自然に見えますし、逆に大きすぎると木が鉢に埋もれてしまいます。
盆栽の将来性
盆栽は近年ますます海外で人気が高まっています。
日本の芸術文化が世界中で認められており、「bonsai」というワードが共通言語になりつつあります。
この記事を読んでくれたあなたも、日本の伝統文化である盆栽に少しでも興味を持ってもらえると嬉しいです。
まとめ
いかがでしたか?
盆栽とはどんなものなのか、少しでもわかっていただけましたか?
写真を眺めたり、本やブログを読むだけではなかなか分からないと思います。
ぜひ、展示会へ足を運んだり、実際に育てて鑑賞してみてください。
盆栽の魅力をたくさん感じることができると思います。
この記事で少しでも盆栽へ興味をもってもらえたら嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。